日本とトルコ 100年の歩み

日本・トルコ外交関係樹立100周年

千葉工業大学

千葉工業大学

 トルコには旧石器時代からオスマン朝時代の近代、そして現代にいたるさまざまな遺跡が数多く知られています。そうした遺跡は、過去数万年以上もの間、変転する地球環境のもと技術革新や資源開発、文化発展を通じて、さまざまな文化や宗教をもった多種多様な民族が作りだしてきたものです。多様な文明の形成と発展、衰退が繰り返された複雑な歴史の道すじを知ることは、混迷が続く現代の私たちの未来を切り拓く可能性も秘めています。

地質調査の様子
地質調査の様子
地質調査の様子
地質調査の様子
地質調査の様子
地質調査の様子

 千葉工業大学地球学研究センターでは、トルコの大地で繰り広げられた地球と人類のダイナミックな歴史を解明すべく、考古学と地球惑星科学を統合したアプローチによる研究を進めています。古代遺跡の発掘調査に加えて、発掘された出土遺物の化学分析や、遺跡周辺湿地の地質調査・試料採取・分析を行っています。

 2021年にはアンカラ・アナトリア文明博物館での調査を実施し、同博物館に所蔵されている古代の鉄製資料の非破壊・非接触手法による化学分析を行いました。これらの資料にはヒッタイト帝国時代の本格的な製鉄技術が確立される以前に作られたものが含まれており、この地域における冶金技術の発展について重要な情報が得られました。

カマン・カレホユック遺跡での測量
カマン・カレホユック遺跡での測量
カマン・カレホユック遺跡での測量
カマン・カレホユック遺跡での測量

 また、環境変動と人間活動の関係について、主にトルコ中部の遺跡を対象として研究を進めています。2021年には世界遺産チャタルホユック遺跡において新石器時代の遺跡内堆積物試料を、2022年からは中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所が発掘調査を手がけるカマン・カレホユック遺跡において前期青銅器時代から鉄器時代にかけての遺跡内堆積物試料を採取しました。また、カマン・カレホユック遺跡近傍の湿地と、乾湖であるエスキ・アジュギョルでの掘削調査を実施し、約5000年前までの湖底堆積物を含むコア試料を採取しました。これらの採取した試料から当時の人々の活動の痕跡やこの地域における気候変動についての情報を得るために、トルコ国内の研究機関において化学的な分析を進めています。

ハルベトスワン・テペシ遺跡で磁気探査等を実施
ハルベトスワン・テペシ遺跡での発掘調査の様子
ハルベトスワン・テペシ遺跡で磁気探査等を実施
ハルベトスワン・テペシ遺跡での発掘調査の様子
ハルベトスワン・テペシ遺跡で磁気探査等を実施
ハルベトスワン・テペシ遺跡で磁気探査等を実施

 2022年からは、シャンルウルファ博物館や東京大学と共同で、トルコ南東部のハルベトスワン・テペシ遺跡の発掘調査を開始しました。この遺跡は巨石建造物で知られるギョベックリ・テペ遺跡と同時代で、1万年以上前にさかのぼる新石器時代の居住跡とされている遺跡です。文明の発展に大きな貢献をしたムギなどの栽培農耕や、ヒツジやウシなどの牧畜の起源と関わる極めて重要な時代にあたります。これまでの調査ではドローンによる地形測量や、地中レーダー探査と磁気探査による地下構造の探査を行い、遺跡全体の規模を明らかにしました。発掘調査では稀少石材と鉱物を加工して作った装身具や、フリント製・黒曜石製の石器や磨製石器群、動物骨が数多く出土しました。これらの調査により、当時の技術と生活様式、そして文明初現期の人類史を考える上で重要な手がかりとなるデータを多数得ることができました。

 以上のようにまだ研究の緒についたばかりですが、私たちは地球と人類文化の共進化を明らかにすることを目指してこれからも研究活動を続けるとともに、学術調査や研究を通じて日本とトルコのつながりを未来へと発展させることができればと考えています。

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